コラム/Category02

内科診療・漢方・プライマリーケア
2022年6月
カテゴリ02 内科診療・漢方・プライマリーケア
アレルゲン免疫療法の舌下免疫療法

最近、患者様から、アレルゲン免疫療法の舌下免疫療法について、お問い合わせが増えています。春の花粉の時期が落ち着き、症状のない今の時期に、なんとかアレルギーを克服したい、と思われる患者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、舌下免疫療法のご紹介です。

<舌下免疫療法とは>
花粉症を含むアレルギー性鼻炎は、アレルゲン(抗原)と呼ばれる原因物質(ダニ、スギ花粉など)によって引き起こされます。舌下免疫療法とは、その患者様のアレルギーの原因となっているアレルゲンを、少量から徐々に量を増やし繰り返し投与することにより、体をアレルゲンに慣らし、症状を和らげる治療法です。根本的な体質改善(長期寛解・治癒)も期待されます。舌下免疫療法は、アレルゲンを舌の下に投与する治療法で、現在、スギ花粉症およびダニアレルギー性鼻炎に対して行われています。

<治療の流れ>
まず、問診と血液検査で、その患者様のアレルギーの原因(アレルゲン)を確かめます。気管支喘息や口腔内に傷や炎症のある方、他の疾患で治療を受けている方、妊婦・授乳婦の方などでは、舌下免疫療法による治療を受けられないことがあります。
治療は、1日1回、舌下に薬剤を投与します。投与後は1分間または2分間舌下に保持し、その後飲み込みます。投与後5分間はうがいや飲食を控えます。
また、投与前後2時間程度は入浴や飲酒・激しい運動を避けます。投与する薬剤(アレルゲン)は徐々に増量します(スギ花粉症なら1または2週間、ダニアレルギー性鼻炎なら1週間など)。副作用に対する対応を考慮し、初回投与は医療機関内で行い、その後30分間は医師の監視下で待機します。翌日(2日目)からは、自宅で患者様自身が投与しますが、日中や家族のいる場所での投与が推奨されます。
治療期間は2年以上、3 ~ 5年が推奨されます。また、 投与を長期中断した後、再開する場合は、医師に相談する必要があります。なお、当院への通院が難しい場合や治療途中での転居の必要性が生じた場合は、近くのアレルギー専門医療機関を紹介のうえ治療 を続けることも可能です。



<有効性について>
一般的に舌下免疫療法を含むアレルゲン免疫療法では、8割前後の患者様で有効性が認められています。スギ花粉症およびダニアレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法においても、種々の報告からその有効性・安全性が確認されています。
また、飲み薬や点鼻薬、点眼薬はあくまで一時的に症状を抑えるだけで、根本的な治療ではありません。根本的な体質改善(長期寛解・治癒)を望む患者様には、積極的にお薦めしています。

<安全性について>
副作用としては投与部位である口腔内の腫れ、痒みなどが最も多くみられます。特に、投与後少なくとも30分間、投与開始初期のおよそ1ヵ月間などは注意が必要です。これらの副作用は投与後数時間で自然に回復することが多いのですが、症状が長時間持続する場合は、医師に相談してください。また、アナフィラキシーなど重篤な症状が起こる可能性もあります。アナフィラキシーと考えられる症状が発現した際は、直ちに医療機関を受診するなど迅速な対応が必要です。
※参考文献:日本アレルギー学会 スギ花粉症におけるアレルゲン免疫療法の手引き

内科 天野 慶子

2022年6月
カテゴリ02 内科診療・漢方・プライマリーケア
慢性腎臓病

毎週金曜日、内科外来を担当しております天野と申します。
専門が腎臓内科なので、今回は慢性腎臓病(chronic kidney disease=CKD)という病気のご紹介です。

腎臓は背中側の腰のよりやや高い位置に、左右に一つずつある臓器です。
腎臓は、血液中の不要なものを尿として体の外に排出することで、体の水分やイオンなどのバランスを保ちます。体が酸性に傾きすぎないように調整もします。また、造血ホルモンを作って貧血を防いだり、骨を丈夫にするホルモンや、血圧を保つホルモンとも関連があります。

この腎臓の働きが、ゆっくりと時間をかえって悪くなるものが慢性腎臓病です。
この病気の怖いところは、初期は症状に気づきにくいところだと思います。
かなり病期が進行してくると、夜間尿、体のむくみ、疲れやすい、食欲低下、息切れ、皮膚がかゆい、などの様々な症状が出てきますが、その時には手遅れということも少なくありません。
治療を行わずに慢性腎臓病が進行すると、心筋梗塞などの命にかかわる危険な病気を合併したり、腎機能が廃絶して末期腎不全へ至り、透析治療や腎移植が必要となる方もいます。



2011年の報告では、日本では成人人口の約8人に1人がCKD患者と言われています。
慢性腎臓病の原因は様々ですが、生活習慣病(糖尿病、高血圧など)や加齢を背景としたものが多数で、早期発見、早期治療が大切な病気です。
腎臓は一度、機能が低下すると回復させるのは難しいと言われていますが、原因疾患の治療、生活習慣の改善(食事指導など)、内服治療を行うことで、進行を遅らせることができます。
健診で尿の異常(蛋白尿など)や、腎機能低下(血清クレアチニン値の異常)を指摘された際には、ぜひ、一度、当院にご相談ください。
患者様ひとりひとりに寄り添い、健康な腎臓生活を一緒に考えていけたらと思います。

内科 天野慶子
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脂質異常症とは

脂質異常症とは一般的に以下の数値が高くなると脂質異常症(高脂血症)と診断されます。
①LDLコレステロールが高い(基準値140mg/dL以上)
②HDLコレステロールが低い(基準値40mg/dL未満)
③中性脂肪(トリグリセライド)が高い(基準値150mg/dL以上)

①LDLコレステロール(悪玉コレステロール)とは...
LDLコレステロールの増加には「飽和脂肪酸」の取り過ぎが原因の一つにあります。
飽和脂肪酸は乳製品や肉の脂身などに多く含まれていて、冷蔵庫で白く固まる油といったイメージです。
コレステロールと聞くとまるで有害物質のようなイメージがありますが、コレステロール自体は細胞膜・各種のホルモン・胆汁酸を作る材料となり、体に必要な物質です。
しかし増えすぎると血管壁に蓄積して動脈硬化を進行させる原因になります。

②HDLコレステロール(善玉コレステロール)とは...
HDLコレステロールは、体内の血管や細胞から増えすぎた過剰なコレステロールを集め、排泄する働きがあります。
HDLコレステロールが少なくなる要因は、肥満、喫煙、運動不足などです。
少なくなったHDLコレステレロールを直接薬で増やすことはできません。今の生活習慣を見直し、HDLコレステロールを減らす要因があればそれを改めることが最も大切です。

③中性脂肪(トリグリセライド/TG)とは...
中性脂肪増加の原因は、食べ過ぎ、飲み過ぎ、運動不足です。
中性脂肪の主な材料は、食事から摂取した糖質や脂質です。摂取した糖質や脂質は私たちが活動するためのエネルギー源になりますが、消費されなかった分は肝臓に送られて「中性脂肪」になります。
つまり「食べ過ぎ」で肝臓で作られる中性脂肪を増加させ、「運動不足」によって蓄積します。また、アルコールを「飲み過ぎ」で、肝臓では「中性脂肪の分解」より「アルコールの解毒」が優先され、分解が追いつかなくなった脂肪が肝臓にたまり続け、いわゆる脂肪肝となります。
また、中性脂肪が増えすぎると、LDL-コレステロール(悪玉)が増え、HDL-コレステロール(善玉)が減りやすくなることがわかっています。

脂質異常症を放置すると・・・
脂質異常症は自覚症状はありませんが、気づかないうちに血管が傷つけられ、進行するとコレステロールが血管壁にたまり、血管が硬くなって柔軟性が失われてしまいます。
このような状態を「動脈硬化」と呼びます。
動脈が硬くなるだけなら、大きな問題はありません。しかし、コレステロールでできたプラークが何かの刺激で破れると、傷を修復するため、血小板でかさぶたが作られます。これが血栓と呼ばれるもので、血流が完全に妨げられると、その先の組織に酸素や栄養が行き届かなくなります。
また、動脈硬化は進行を遅らせることは出来ても、血管を元に戻すことは出来ません。
早期に治療・改善していくことが大切です。

脂質異常症の治療法
主に生活改善と薬物療法があります。どのタイプかによって推奨される生活指導は異なるため、医師と相談することをおすすめします。
また代表的な薬はコレステロールの値を下げる薬で、代表例はスタチン系とよばれるものと、小腸からのコレステロールの吸収を抑えるものです。中性脂肪の値を下げる薬で、代表例はフィブラート系やEPA製剤とよばれるものです。
当院では健康相談と生活習慣病外来を実施しておりますので、健康診断の結果で気になる点がございましたら是非ご来院ください。

院長 村井ひかる
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コロナ大流行中だからこそ、風邪をひかないことが大切!

コロナ大流行中の今、ただ風邪をひき「熱が出た」「咳がでる」という状態になっても、「コロナにかかったかもしれない」と不安になってしまいます。したがって、「少しのどが痛い」「少し鼻水が出る」といった風邪の初期症状を感じたら、早めに対処し、風邪を悪化させないことが大切です。

“風邪のひき始めには葛根湯(かっこんとう)”という言葉をテレビなどで耳にしたことがあるかもしれませんが、私も風邪の初期には葛根湯を飲んでいます。葛根湯は7つの生薬で構成された漢方薬でして、身体を温めて体温を上げ、免疫力をアップするお薬と言われています。体温が1℃上昇すれば免疫力が5-6倍アップすると言われており、風邪のひき始めに葛根湯を服用することで体温を上げて免疫力をアップし、風邪のウイルスが体内で大増殖をする前(ウイルスの力が弱いうち)にウイルスを退治し、風邪を治します。

さらに私の場合は、普段から暖かい飲み物を飲んだり、お風呂にゆっくり入ったりしてできるだけ身体を温め、厚手の靴下を履き、腹巻をして保温に努めることで、風邪をひかないようにしています。

当院はプライマリケア(ホームドクター)の役割を担っておりますので、風邪の初期症状など症状が軽い場合でも、ご心配があればお気軽にご相談下さい。生活スタイルの改善や漢方薬などの利用も併せてご提案させていただいております。そうして心安らかに健やかな毎日を過ごしましょう!

院長 村井ひかる
カテゴリ02 内科診療・漢方・プライマリーケア
私たちの目指すプライマリー・ケアとは

当院の名前にある“プライマリー”は、“プライマリ・ケア(英: Primary care)”のことを意味しています。この “プライマリ・ケア” とは、どんなものであるか、ご存じでしょうか?
日本プライマリ・ケア連合学会(2014年)によると、「プライマリ・ケアとは、国民のあらゆる健康上の問題・疾病に対し、総合的・継続的、そして全人的に対応する地域の保健医療福祉機能を指す」と定義されており、プライマリ・ケアを担う医師は、直ちに生命の危険がない新規患者を診察し、患者の長期的な健康状態をサポートし、必要な場合には病院に紹介することが仕事とされています。

私たちは、このプライマリ・ケア医ですが、プライマリ・ケア医を簡単に言ってしまえば“大人用・保健室の先生”と言えます。
クリニックでは、問診と診察のほか、簡単な検査(採血・心電図・レントゲンなど)しかできませんが、症状の詳細をお聴きし診察させて頂くことで、どのような病気の可能性が考えられるかを判断できます。当院で対応可能な病気については治療をさせて頂けますが、当院で対応困難な場合には、対応可能な専門科のクリニックや病院をご紹介致します。

また、プライマリ・ケア医には健康状態をサポートする役割もありますので、健康について心配事がある場合には、気軽にご相談して頂ければと思います。
例えば、「血糖が高いかもしれない」「コレステロールや中性脂肪が高いかもしれない」「血圧が高いかもしれない」など、生活習慣病の有無が心配な場合には、採血で確認したり、血圧測定をしたりできます。もし、生活習慣病がみつかった場合には、これを放っておくと、のちに狭心症/心筋梗塞や脳梗塞、心不全などの大病を引き起こす可能性が高くなりますので、当院で治療が開始できます。

生活習慣病の初期で「まだ薬は飲みたくない」という場合には、生活習慣病の原因となる肥満改善のお手伝いや定期受診で経過観察をしながら薬剤投与のタイミングを図ることもできます。成人病のように申告でなくても、近年増加しているアレルギーが心配であれば、血液検査で大まかなアレルギーのチェックを行なえます。

ともかく、身体について心配事があれば、一度、クリニックにおいでになってみて頂き、お話を聴かせて頂ければ幸いです。

院長 村井ひかる
   Writer
院長 天野 慶子 医師
◆日本内科学会 総合内科専門医
自由が丘プライマリークリニック 内科/腎臓・高血圧内科/循環器内科/アレルギー科/糖尿病科